通信技術は人類の歴史とともに発展してきました。離れた仲間に煙で情報を知らせる狼煙に始まり、モールス信号や手紙、電話など情報伝達の進化の方向性は様々。今ではコンピューターを用いて画像や動画などのコンテンツも世界中と簡単にやり取りができるようになっています。
そして今、離れた場所に「料理」を転送する。という何とも信じられないようなプロジェクトが進められています。
これが実現すれば、「日本の職人が握ったお寿司を、地球の反対側の南米のジャングルで食べる」といったことも可能に。この何とも夢のようなプロジェクトの詳細をまとめました。
日本の有名企業・大学が進めるプロジェクト『OPEN MEAL』
⇒http://www.open-meals.com/index.html#projectteam
このプロジェクトは『OPEN MEAL』と名付けられ、電通・デンソー・山形大学・東方新社の共同チームによって研究が進められています。事業のコンセプト、プロモーションを電通が、料理を転送する独自の機器『Pixel Food Printer』の開発・技術提供をデンソーと山形大学が、映像制作や全体のマネジメントは東方新社が担当。
火の使用、農耕への移行、保存食の開発、大量生産、に次ぐ”第五次食革命”として食のデータ化・転送・出力から成る、料理のシェアを謳っています。
あらゆる角度から料理を測定、データ化
⇒http://www.open-meals.com/pixelfoodprinter/index.html
料理の転送には、まず料理情報のデータ化が必要。チームでは料理の味・形状・食感・栄養素を徹底的に測定したとのこと。見た目や味だけではなく、食感や栄養素まで再現するつもりとは何とも恐れ入りますね。
味の測定には「味覚センサー」を用い、「甘味・塩味・旨味・酸味・苦味」の五大味覚に加え、「うま味」も再現。微妙な形状の違いで味の感じ方も変化するため、3Ðスキャナーを用いて料理の形状も測定しています。
料理の食感・水分値・密度には圧力センサーやMRIを。栄養素も栄養成分分析器を用いて、あらゆる角度から完全に元の料理を再現しています。
食のデータプラットフォーム『food base』
そうしてあらゆる角度から測定された料理のデータは、デジタル食プラットホーム『food base』にてデータベース化。ここでは、食データの「アップロード」「検索」「ダウンロード」「シェア・配信」が可能と、まるで音楽や動画などのコンテンツ配信サイトのように料理のシェアが可能になります。
もちろん、ただ情報としての料理データを共有するだけではありません。フードプリンターと連動させることによって、どこにいても世界中の料理が自由に楽しめるようになります。
うーん、もはやドラえもんの道具のような話になってきて、現実感が沸きません(笑)
食に関する従来のビジネスモデルは崩壊するかも・・・?
もしこのプロジェクトが実現すると、地域の名物料理や有名調理師の作った料理も自宅にいながらボタン一つで楽しめることになります。今までのように、客がお店へ料理を食べに行き、料理を作った人(お店)に直接お金を支払う。というビジネスモデルから、料理を作った人には音楽や書籍のように「印税」という形で利用者からお金が支払われる。というモデルに変容するかもしれません。
そうなると実際の調理を行なう人しかお金を得ることができなくなるので、とホールスタッフや洗い物をする従業員は仕事を失います。一般人でも簡単に料理を配信できるようになるので、料理界の競争は激化。ありきたりな味の料理ではDL数を稼げないため、有名アイドルの手料理だったり、見た目を工夫したキャラ料理などの味以外に付加価値のある料理を作る人が増えそうですね。
芸能人よりも稼ぐYoutuberのように、一流シェフよりも高い人気を誇る一般人も沢山現れるでしょう。料理の海賊版サイトなんかも現れ、賛否両論を生みそうです。
料理を転送する「フードプリンター」、その驚きの仕組みとは?
http://www.open-meals.com/pixelfoodprinter/index.html
いくら料理を解析しデータ化・転送しても、それをカタチにする方法がないと意味がありません。当プロジェクトではデンソーの情報提供の下、山形大学が専用の機械を開発しています。
それが『Pixel Food Printer』と呼ばれる料理の3Ðプリンター。ありとあらゆる料理をあっという間に作り上げる”究極の料理人”です。百聞は一見に如かず。かなり気になる方も多いと思うので、まずはこのフードプリンターで実際の料理を作っている様子をご覧ください。
何と言っても今までの料理ロボと全く違うのが、調理をしていないという点(笑) 何か粒のようなものを組み立てて海老のお寿司を作りあげました。
あの粒の正体はピクセルキューブと呼ばれる無味無臭のゲル。味や食感、水分量、栄養素などの情報をプリンター内でゲルに付与。そのゲルを一粒一粒、解析した料理のデータ通りにロボットアームが組み立てていきます。ピクセルキューブは一粒ごとにその情報が異なるため、全体で均一な味がするのではなく、現実の料理のように食べる箇所によって味も食感も変化。普通の料理を食べているかのような感覚が味わえます。
動画では一粒5mm立方くらいの大きさのピクセルキューブでしたが、その大きさを細かくしていくことにより、さらに精巧な形状に近づけることができるとのこと。キューブの形状はそのままに、味のみを変えることもできるそうなので、見た目はエビのお寿司・味はチョコレートケーキという食べ物も作れそう・・・。アレルギーを持つ方や宗教上食べられないものがある方にも役に立つでしょうね。
世界でも話題沸騰!今後のさらなる進化に注目。
Day 3 at #SXSW! Pixel sushi anybody? pic.twitter.com/DR2J52LpQE
— Mashable (@mashable) 2018年3月11日
2018年3月には、IT界のパリコレとも呼ばれる全世界のテクノロジーの祭典”SXSW”にも出店。会場でかなりの注目を集め、ブースは常に超満員だったとのこと。世界中で開発資金の提供や共同事業のオファーが殺到してるそうです。
そんなOPEN MEALプロジェクトでは、引き続き技術開発のパートナーや開発資金の提供スポンサーなどを募集しています。これからの食文化を大きく変るであろうこのプロジェクト。ピクセルフードプリンターの開発や料理データの取得技術など、まだまだ実現までの課題は山のようにある状況です。ぜひこの夢のプロジェクトに携わりたいという方は、ぜひ一報してみてはいかがでしょうか。