【紹介・レビュー】性的同意アプリ「キロク」性交渉前に使ってみた。

2023年7月13日、性犯罪に関する刑法が改正され、「不同意性交等罪」(刑法177条)と「不同意わいせつ罪」(刑法176条)が新設。暴行や脅迫の有無にかかわらず、相手が同意していない「性行為」「わいせつ行為」が違法となりました。

ここで物議を醸したのが、「同意した・同意していない」を現実問題としてどう判断するのかという問題。現実的には、被害者の証言や行動、加害者の認識、状況証拠などが実際の判断基準になるかと思われますが、加害者と被害者の証言が食い違った場合には、明確に判断することが極めて難しいと言えます。

つまり性行為を行なう際には、常に「その時は合意のつもりでも、後から相手に『不同意だった』と言われてしまうリスク」が発生するという問題があります。前置きが長くなりましたが、そこで誕生したのが性的同意アプリ「キロク」。性行為などについて同意の有無をデジタル上で明確に残すことを目的に、今回の刑法改正に伴って開発されたとのことです。

性的同意アプリ「キロク」

まずは実際に登録してみる。

ということで、実際に登録してみてみる。アプリなどのDL不要で、Web上で利用することが可能。ただし利用前には新規登録が必要となります。登録に必要なものはメールアドレスとパスワードのみ。ただメールアドレス認証が必要で、利用開始までにはスムーズに進んでも1~2分ほどはかかるかと思います。

また自分の場合は、初めYahoo!メールアドレスで登録したのですが、なぜか確認メールが5分待っても10分待っても送られてこず…。痺れを切らせてGmailでも試しましたが、こちらもダメ。結局認証メールを再送信することで無事に登録を完了することができました。

今回は事前に作業していたので良かったですが、これが本番直前だったら・・・(笑)雰囲気もクソもなくなってしまいますよね。今回はボクの不手際だったのかもしれないですが、どんなトラブルが発生するかわからないので、使用したい人は事前に登録を済ませておくことをお勧めします。

パートナーとの性交渉前に「性的同意」をお願いしてみる。

では無事に登録完了というわけで、実際にパートナーとの性交渉前に使ってみる。僕の場合はおかげさまで長年連れ添ったパートナーがいるので、今更性的同意なんて…という感じもあるのですが、とはいえ今後何があるかはわからないので、お願いしてみることに。

第一反応は、「え・・・どしたの!?」的な反応でした。まあやっぱりまだ世間一般的に「性的同意」というのは浸透していない文化だと思うので、(なぜコイツはいきなりそんなことを言い出すのだろう)という感じの、若干勘繰っているかのような様子でした。自分の場合は「ブログのネタに…」ということで説明し納得してもらいましたが、長年連れ添ったパートナーにせよ、その日初めて会った相手にせよ、何らか「意図を説明する」という工程は必要かのように思います。

まだまだ浸透していない文化だけに、「理由や背景もわからないまま同意を要求される」というのは、やっぱり相手からしても若干怖くはありますからね。「なぜ性的同意を取りたいと考えているのか」という前提の説明をきちんと行なう必要があるということは、念頭に置いておくとよいかと思います。

「性的同意」を行なうまでのフロー

ログイン後に「キロクする」を選んだあとの画面が上記。非常にシンプルなUIで、まずは一問一答形式で、聞かれた質問に対して答えていくことになります。質問内容は主に、自分が正常な判断のもとで、本当にその相手との性行為について同意できているかという内容。質問は全10問で、それぞれに「確認しました」ボタンが設置されているので、それにチェックを入れていく形式になります。

そして後から気づいたのですが、これは「まず自分が質問に回答する」ということ。対応が完了したら、次はQRコードが表示され、相手が質問に回答するターンとなります。そしてこれまた後から気づいたのですが、QRコードを読み取るためには、相手も新規登録が必要ということです。

相手もメールアドレスとパスワードを設定。メールのURLをクリックし、メールアドレス認証を完了する必要があります。すると、上記画面に遷移するので「QRコード」を選択。カメラが起動するので、先ほど表示されたQRコードを相手が読み取り、同様に質問を回答することになります。ここまで終えると、性的同意の「キロク」完了です。

QRコードは上記メニューから読み取りしないとダメ。例えば新規登録を行なわないまま、普通にスマホのカメラ機能で読み取るだけでは、回答画面には遷移しないのでご注意を。

「キロク」後は上記のように履歴が残る形となります。黒線部には登録時のメールアドレスが記載されており、そのほかの情報はキロク完了の日時のみ。非常にシンプルです。

キロクした情報は二日以内であれば双方ともに「取り消し」が可能。取り消し機能の実装意図に関してはHPトップに以下のような公式回答がありました。

当初、取消機能というものは想定していませんでしたが、密室において無理やり同意をさせられて、これを「同意あり」の証拠として利用されることが懸念されました。そのような場合に、相手方と離れて以降「同意を変更できる」ようにすることで、本当は同意していなかった場合に、その旨の意思表明ができるようにしたということです。

なお、48時間という時間が妥当か(短すぎる・長すぎる)は、運用状況を踏まえて、今後改善の余地はあるものと考えます。

https://kiroku-6.com/

性的同意アプリを使用してみての感想

使用前は「性的同意」という言葉の印象として、お互いの意思を確認し合う、いわば一つの「契約」のようなイメージを持っていました。その分本サービスのかなりシンプルなUI/UXには少しギャップがあったというのが正直なところです。氏名・住所などの個人情報の記載は特に必要なく、メールアドレスと質問への回答のみで「キロク」できるというシンプルなつくりでした。

ただ一方であまりにも仰々しすぎても、行為前の雰囲気もくそもなくなってしまうので…このくらいのラフさのほうが「性的同意」というものを受け入れやすい側面もあると感じました。

あと僕の場合は長年関係性のあるパートナーでしたが、性的同意を切り出したときには、「なぜ性的同意を取りたいのか?」という部分に怪訝そうな表情を浮かべていたのが印象的でした(当然といえば当然かもしれませんが…)。相手が初めて関係性を持つ人でも、そうでない人でも、いずれにせよ背景や意図、想いの説明は丁寧にしたほうが良さそうです。

何のために、どういう点を懸念…あるいは安心したいために、性的同意を取りたいのか。そこを誤解なく伝えること。性行為もそうですが、その前段にある性的同意においても、自分の一方的にならないように気を付けたいですね。

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